辛い時の気分転換 ー『キネマの神様』を読む

未分類

■はじめに

目先のことで手一杯になると、
どんどん視野が狭くなって辛くなっていくんですよね。
不安に感じていることや上手くいかないことがあると、
他のことを考えようとしても、頭の片隅に居座って、
ずっともやもやしてしまいます。


そんな時は何かに集中することで忘れようとしています。
最近は読書することが多いのですが、思いがけず良い本と出会ったので、
紹介したいと思います。


原田マハさんの「キネマの神様」という本で、
映画化もされている有名な本です。
(映画は観ていませんがどうやら本と内容が結構違うみたいです)
聞いたことはありましたが、全くあらすじも知らない状態でなんとなく読み始めたら、
いつの間にか熱中して読んでいて、読み終わるまでに何度も温かい気持ちになりました。
家族愛や友情がテーマになっており、のどかな感じかと思っていたのですが、
いつの間にか思いもしない展開になっていって、
結末に向かって駆け抜けていくような作品になっています。


簡単なあらすじと感想を書いていきたいと思います。
思うままに書いていったらネタバレを含んでしまうような気がするので、
ご注意ください。

■あらすじ

序盤はどこか曇っているかのような、冴えない感じで始まります。
ギャンブル大好きで隠れて借金をするような79歳の父(ゴウ)をもつ、
主人公の歩(あゆみ)は、大きなデベロッパー会社の課長で、
一つの建物に複数のスクリーンをもつシネコンを作ろうと奔走していたのですが、
あらぬ疑いをかけられて、隅っこに追いやられたことをきっかけに会社を辞めてしまいます。


そして、そのタイミングで父親のゴウが病気で入院します。
ゴウはマンションの管理人をしていたのですが、歩が代わりに管理人の仕事をしていると、
管理人室にて、ゴウが書き溜めていた日記が出てきます。
その日記には映画について書かれているのですが、
それを読んだ歩は笑ったり、泣いたりと強く惹きつけられます。
歩も近くにあったチラシに真似して、「ニュー・シネマ・パラダイス」という映画について書いたのですが、
これをゴウが映画雑誌社のブログに投稿することで、物語が動き出します。


ある日、歩にこの映画雑誌社(映友社)から、ライターとして雇いたいとの連絡が届きます。
映友社の社長がすごい人だったこともあり、就職を決意するのですが、
後々判明するのが、本当は歩の評論よりもゴウの文章が特に読む人を惹きつけており、
歩がスカウトされたのはちょっとした行き違いだったのでした。
そんなこともあり、映友社で「キネマの神様」というWebサイトが立ち上げられた時に、
ライターとしてゴウが抜擢されます。


ゴウが投稿する映画評論は多くの人を惹きつけ、好評だったのですが、
ローズ・バッドというハンドルネームの人からは鋭い指摘や煽るようなコメントが投稿され、
ゴウもそれに反撃したりすることで、このやりとりが名物になっていきます。
細かくは書きませんが、
ローズ・バッドとゴウのやりとりが思わぬ方向に向かっていって、
その流れで心温まる展開が連続します。
この二人の友情と、ゴウを取り巻く人間関係が良い形にまとまっていき、
最後にはみんなで1つの映画を観る場面でクライマックスになります。

■感想

あらすじは簡単にまとめるつもりだったのですが、
色んな展開が重なって最後には思わぬところに行き着くので、長くなってしまいました。
ただ、これでもたくさん登場人物や物語を省略しています。
社長である峰子さんの息子、興太であったり、歩の前の会社時代の後輩、清音、
ゴウ行きつけの名画座の経営者テラシン、
それぞれの登場人物の話が歩とゴウ中心の物語と重なって、
最後の場面に繋がっていくのが、この本の構成としてよくできている部分な気がします。


そこまで本に詳しいわけではないですが、小説としての完成度が高いのかなと思っています。
登場人物は多いものの、それぞれの人物が個性的ですし、
視点は歩だけなので混乱しません。
それぞれの人物の思いが交差したり、ちょっと考えさせるようなテーマを織り交ぜながら、
ストーリーとしては綺麗に終わっていくのが、まとまりが良いです。


途中に出てくる歩と清音の約束である「一番好きな映画をお父さんたちと一緒に、一番好きな映画館で見る」
ということをちゃんと叶えてくれて幸福な気持ちと、
ローズ・バッドの登場とお別れは思わぬ展開で驚きの気持ちなど、
読み進めている間にのめり込む要素も詰まっていました。
テアトル銀幕が息を吹き返したお礼をローズ・バッドに伝えるときの言葉には特に胸を打たれました。

「奇跡はときに、起こる。キネマの神様は、きっといる。
 ・・・
  友よ、本当に、ほんとうに、ありがとう。」

あとはこの本を読んでると、映画を観たくなるし、映画館に行きたくなります。
本に出てくる映画はほとんど実際にある映画だと思いますが、
その評論がその映画を観たくさせるような書き方なんですよね。
評論と言ってもあまり難しいことは書いていなくて、
ゴウ視点でどんなに良い映画か書かれています。
久しぶりに映画館に映画を観に行って、
仕事が上手くいくか分からない不安を捨ててこようと思います。

■さいごに

映画の書評が本の中に何度も出てくるので、
感想書くのにもその書き方を意識してしまったかもしれません。
良い書評がどのようなものか分かっていませんが、
感じたことを素直にその人の言葉で表現するのが大事なのではないかと思います。


自分が感じたことを表現するのは勇気いることです。
自分と違う意見の人からすると、反発があるかもしれないですし、
だいぶずれたことを言ってしまう可能性もあります。


それでも自分が感じたことに自信を持ていれば、
共感してくれる人が少しはいる気がします。
たとえ少しでも同じ想いを抱えている人がいたら、絆になるのかなと思います。

———————————–

自分がamazon kindleで出版した本になります。
kindle unlimitedに加入している方は無料で読んでいただけます!

『自分が無能でしんどい』
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D7ST4WZK


コメント

タイトルとURLをコピーしました